ボロボロになったクマさんの人形を、どんな時も離さない、とか、寝るときは必ずお気に入りの何かがないと寝られないとか。
そんなものに依存した子供が存在するのか、と半信半疑だったけど。
自分の娘がまさかそうなるとは。
はじまりは、2年とちょっとさかのぼる。
まだ1か月だった娘へ、私の父親が買ってきてそのブランケット。
「これ、よさそうだったから買ってきた。」と渡してきたブランケットは、安さを誇る子供ショップ西松屋の、しかも見切り品だった。
1000円ちょっとのブランケットが、30%オフの700円程で売られていたのではないかと記憶する。
心の中で「いらんわ。」と言い、父親にはぶっきらぼうに「そこに置いておいて。」と言ったブランケット。
出産を控え、名前入りで海外の有名ブランドのブランケットを買ったのだ。出産祝いでジェラートピケの苺柄のブランケットをもらったのだ。
そんな西松屋でたたき売りされてたようなブランケット、私のようなハイソな女が持つわけないだろ、とその時は思っていた。
まさかそれを娘が、「きらきらブランケット」と呼び、どこへ行くにもそのブランケットを、離さなくなるとは、その時は知る由もないが。
西松屋で父親が買ってきたきらきらブランケットを、私の母親が見た時、「なにこの安っぽいブランケット?」と不思議そうに聞いてきた。
私は「パパが買ってきたよ。」とバカにしたように言い、母親と共に笑ったのに。
それからその安っぽいブランケットは、失くしてもいい、と理由で頻繁に外出時に連れ出されるようになった。
海外ブランドのものや、ジェラピケのブランケットは、外出先で万が一失くしてしまったらもったいない、という理由で、外出のお供に選ばれることはない。
あの安っぽいブランケット持っていこう、赤ちゃんが吐き戻したら捨てればいいしね、なんてことを言いながら、使っているうちに、娘はそのブランケットを欲し、探し、そして依存するになった。
そして、私もうすうす気づいていたことを、だんだんと認めることとなる。
このブランケットの、使い勝手のよさを。
ガーゼなのに少しの厚みがあって、それでいて軽い。下に敷いてもいいし、かけてもいい。何度洗ってもへたれない。
いつしか私は、ないがしろにしていた西松屋のブランケットを、もう1つ購入したいと、西松屋に行けばブランケットを探すようになった。
探し始めて今年で1年以上。いまだに出会えていない。
そうこうしているうちに、娘は2歳半になり、「きらきらブランケット」はいつも娘と一緒にいる。
寝るときも、テレビを見るときも、保育園に行くときも、いつもいつも。
洗うといえば、洗濯機を何度も確かめて、その中に自分のブランケットがあるかを確認するほどに。
はじめて保育園に行ったとき、このブランケットを抱きしめながら、ママーと泣いていたらしい。
熱がでてだるいときも、テレビを見ているときも、必ずブランケットは娘を包んでる。
だからこのブランケットは、絶対になくすことは許されないのだ。
だから西松屋へ、商品をバカにしてごめん。そして私の父親へ、安っぽいもの買ってきたとバカにして、ごめん。
娘がこのブランケットを必要としなくなった時、私は泣くだろう。
ずっと大切にとっておいて、娘が大きくなった時に「あなたが小さいころに使ってたブランケットよ。」などと言って、思い出話と共に、みせびらかしたりするだろう。
娘ときらきらブランケットの思い出は、まだまだ続く。
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