先日、ベビーカーで娘を連れてコーヒーを買いに行った帰り、近所の公園内のベンチに座り人間観察していると、シンガポールの灼熱地獄、日陰もない公園に日本人のお母さんと5歳くらいの女の子が遊んでいた。
遊んでいた、というよりもお母さんは常にスマホに目をおとし、女の子を遊ばせている。
砂場でお店屋さんごっこをする、と女の子がいい、お母さんはスマホを見ながら無口な客になる。
シーソーにのる!と女の子がいい、お母さんはスマホを見ながらシーソーにまたがり、無口な重り、となる。
そのお母さんと子供をみながら、「ああ、こんな一番暑い午後に子供を公園に連れてきてお母さん大変だな。」と思い、ふと我に返る。
あんたいつからそんな、甘い女になったんだ、と。
数年前の私なら、タバコを吸いながら女友達に「今日公園にいた母親がさ、子供遊ばせて自分はずっとスマホみてるの。ありえなくないー」とわめいてただろう。
ワインを飲みながら旦那に「そういう母親ってさ、子供産む資格ないと思うのよねー。」と知ったかぶって言っただろう。
去年の今頃は、お腹にいる娘に「ママはあんなお母さんにはなりませんからね。」とお腹をさすりながらつぶやいただろう。
その人と同じ立場にならないと、決してその人の心情をわかろうとしないように。
子供を育てはじめ、10か月たった私は、家の中で退屈にしている子供を遊ばせてあげようと、灼熱地獄の中、公園に連れ出したお母さんのことをたたえている。
スマホでネットショッピングしてようが、友達と旦那の愚痴を言ってようが、おいしいレストラン検索してようが、そんなことはどうだっていいじゃないか。
ずっとスマホをいじってたお母さんは、ふと顔をあげ、さっとスプレー式の日焼け止めをバックからとりだし、子供に塗った。そして、子供に「暑くないの?」と聞いた。
子供が日焼けすることを気遣いながらも、はやく家に帰りたいのだ。子供が暑い、と言って、そろそろ家に帰る、と言ってくれるのを待っているのだ。
思わず笑みがこみあげる。
子供は、「暑くないよ!次はお母さんがお花屋さんになって。」と砂場に走り出した。
お母さんは、「げ。まじかよ。」いう顔を一瞬した後、スマホに顔をおとし子供の後を追う。
砂場にしゃがんで、スマホをいじりながら、無口な店員を演じるのだろう。
がんばれお母さん。
家に帰って子供が昼寝してくれるといいね。お母さん一休みできるといいね。
お母さんに心の中でエールを送り、公園を後にした。
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